■ぼくも英文法が苦手だった
 
 ぼくは中学2年生のとき、ケガで1ヶ月半ほど入院したことがあるんだ。それまでは、塾に通っていたおかげで
英語の成績はよかったんだけど、退院して学校にもどったときにはチンプンカンプン。先生がしゃべっている
日本語さえ英語に聞こえてしまうほど、何もわからない状態に(おちい)ってしまった。
 
 そんなぼくが、塾の授業についていけるはずもなく、退院後、2〜3回通っただけで塾をやめることになり、
その後は、「英語」という爆弾を抱えたまま2年近くを過ごし、やがて高校入試を迎える。

 入試の際、唯一ぼくができたと思えたのは、1年生のときに習った「今、何時ですか」という日本文を英文に
直しなさいという問題だけだった。不定詞も、動名詞も、現在完了も知らず、1年生のときに習った「3単現のs」
という文法用語さえ忘れてしまったまま、ぼくは高校へと進学したんだ。
 
 高校での英語の授業は、中学のときよりさらに難しいものとなり、ぼくは腕時計の秒針が回っていくのを何度も
見ながら、ただひたすら授業時間が終わるのをがまんしていた。そんなある日、授業をしていたA先生が突然
怒り出し、こう言ったんだ。
 
「君たち、こんな問題もわからないのなら、幼稚園からやり直してきなさい!」
 
 このことばは、ぼくだけでなく、勉強不足の者たちに向けて発せられたものだったんだけど、ぼくはそのとき、
本当に腹が立ったのを覚えている。
 
「中学で習い始めたのに、小学校を飛び越して幼稚園からやり直してこいだって?いくら何でもひど過ぎる
じゃないか。今に見てろ!いつかきっと見返してやるからな」
 
 その日から、どんなにしんどくても最低1時間、ぼくは毎日必ず英語を勉強するようになった。そして、半年
ぐらい過ぎたころには、あんなに嫌いだったはずの英文法がよくわかるようになっていたんだ。
 
 A先生、あのとき(しか)ってくれて、本当にありがとうございます。